子育てをしたいと思える土地で、夫婦の夢であったカフェを開業

神奈川県出身の和志さんが南相馬に移住したきっかけやカフェ開業の経緯を伺いました。

・東京都→南相馬市
・陸上自衛隊→電力関係の営業職
→「cokuriya(コクリヤ)」起業

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  • 夫婦で移住

INDEX

松野和志(まつの かずし)さん

1994年神奈川県生まれ。高校生の時に東日本大震災が発生し、被災地でのボランティア活動を経験したことから災害時に人々を助けられる仕事を志す。大学卒業後、陸上自衛隊に入隊し幹部候補生として3年間従事。その後、電力関係の営業職に転職。コロナ禍をきっかけに地方移住を検討し、2022年4月に南相馬市へ移住。2024年、夫婦の夢であったカフェ「cokuriya(コクリヤ)」を開業。松野さんがコーヒーとフード、奥様の美帆さんが焼き菓子や企画を担当している。

松野 和志さん

*将来の子育て環境を探し、南相馬市へ移住・開業

Q.福島県南相馬市へ移住された経緯を教えてください。

コロナ禍を機に、東京での生活を見つめ直したことがきっかけです。隣に住んでいる人の顔もわからない環境に住み続けることに違和感をおぼえ、将来的に、子育てがしたいと思えるような環境を探そうと地方移住を検討し始めました。


当初は長野県や山梨県、長崎県まで視野に入れていましたが、妻が福島県の大熊町出身だったこともあり、実家に近いという理由で福島県に絞りました。東京の有楽町にある移住相談窓口へ行ったり、オンラインも含めて移住セミナーに約30回参加するなかで、起業家が集まる南相馬市に関心を持つようになりました。


南相馬市は、起業型地域おこし協力隊や首都圏などの若者が事業の立ち上げを目指す「南相馬市事業化実現プログラム」など、起業を後押しする制度が充実しています。こうした制度に参加することで、南相馬でコーヒーを振舞う機会をいただきました。その時、通りかかった地元の方が「次は自分のマルシェでも出店してよ」と声をかけてくれて、そこから少しずつ地域に溶け込むことができました。たくさんの人が応援してくれるこの町ならではの良さを感じて、南相馬へ移住しようと決断しました。

はじめの一歩として、田んぼの真ん中でコーヒーを地域の人に振る舞った
はじめの一歩として、田んぼの真ん中でコーヒーを地域の人に振る舞った

Q.カフェをオープンするまでの過程を教えてください。

実家が福島にある妻よりも私の方が移住に関心があり、2022年から積極的に情報収集や開業の準備を進めていきました。


南相馬での物件探しでは、市役所の移住担当職員の方が親身になって一緒に回ってくださり、空き家を紹介してくれました。利益率の低いカフェという形態上、固定費を抑えたかったので、オーナーが「好きにリノベーションしていい」と言ってくれた上に、家賃も安くしていただけたことで今の物件に決めることができました。


開業に要する資金は、福島県の12市町村起業支援金を活用しました。施工は地元の工務店にお願いし、空間デザインや壁の塗装は自分たちで行いました。住宅兼店舗という形で、2024年4月に「cokuriya(コクリヤ)」をオープンしました。



可愛らしい店内の入り口。店奥は住居となっている
可愛らしい店内の入り口。店奥は住居となっている

*地域の方たちの支えが原動力

Q.現在のお仕事、店舗運営について教えてください。

営業は不定期ですが、おかげさまで想定より早く軌道に乗ることができました。近所の農家さんから野菜をお裾分けしていただいたり、常連のお客様が定期的に来てくださったり、とても多くの方々に助けられています。


現在は4名のアルバイトスタッフに手伝ってもらい、お店を運営しています。 店内では、雑貨や調理器具の販売や、イベントとしてお花の販売やさまざまなワークショップも開催しています。

店内で販売している暮らしの道具
店内で販売している暮らしの道具

Q.暮らしに変化はありましたか?

当初イメージしていた「地方でののんびりした暮らし」とは反して、実際にはカフェの仕込みや事務作業などもあり、東京時代よりもずっと忙しい日々を送っています。ただ、どこへ行くにもスムーズで渋滞のストレスはありませんし、生活の質は確実に良くなりました。 


地域との関わり方も変化しました。商工会や自治会に入り、農家のお母さんたちのサークルにも参加して、藍染めやこんにゃく作りなどの体験もさせてもらいました。積極的に地域の活動に参加することで、少しずつ信頼関係を築けています。今こうして営業できているのも地域の方々の支えがあってこそだと感じます。

センスの良い店内は落ち着く空間
センスの良い店内は落ち着く空間

Q.今後はお店をどのようにしていきたいと考えていますか?

店舗の拡大よりも、今のお客様にもっと楽しんでもらえる場所にしたいと考えています。そのために営業日数や営業時間を増やしていけるよう、スタッフの体制も整えているところです。たくさんの人に愛してもらえる場所にしていけたらうれしいですね。

ふくしまぐらしのお気に入りベスト3は?

たくさんの応援

移住するまでもお店をオープンするまでの過程でも、たくさんの方の応援があり夢を実現することができました。現在も、地域の方たちの応援をいただきながら暮らせている実感があります。

自分軸の人たち

東京にいた頃は、付き合う人たちがサラリーマンだったこともあり「自分のやりたいことがわからない」という人が多かったです。南相馬では自分軸を持って、やりたいことを表現している人が多いのが印象的です。

くだもの

フルーツ王国福島に来て、くだものに対する認識が大きく変わりました。例えば、桃といっても「あかつき」や「はつひめ」など種類があって、品種によって味もぜんぜん違います。しっかり手をかけて育てたものをいただけるありがたみを感じています。

Q.福島県へ移住を考える方へのメッセージ

本当に有益な情報はインターネットには載っていません。その土地に合うかどうか、現地に足を運んで色々な人に会ってみてください。地域の歴史や習わしをしっかり知った上で地元の方と話すと、信頼してもらえるし、友人や知人もできて地域に溶け込みやすくなると思います。

移住は、仕事も住む場所も人間関係も、自分の身の回りのことを変える大きな出来事です。 時には勢いも必要ですが、まずは自分に合った一番いい場所をゆっくり探してほしいです。

おすすめの近隣スポットは?

南相馬市鹿島区にある「烏崎(からすざき)海岸」です。駐車場から海が見えるので、朝ごはんを持って海を眺めながら食べたり、営業後の夕暮れに行ってぼーっと過ごしたり、心を落ち着かせるのに好きな場所です。



烏崎海岸

南相馬市鹿島区烏崎字牛島256-2

https://www.tif.ne.jp/hontabi/info.html?info=4



  • 提供:南相馬市

編集後記

現地に何度も足を運び、地域の人たちと交流したことで、移住・開業に至った和志さん。誠実な姿勢が地域に受け入れられ、応援されていることが伝わってきました。


今回は南相馬市に移住された松野さんの移住のきっかけと開業までの道のり、ふくしまぐらしの良さについて伺いました。今後も県内各地の移住者の方にお話を伺っていきます。福島県へ移住、Uターンを検討されている方々の参考になれば幸いです。


カフェ「cokuriya(コクリヤ)」のInstagramアカウント

https://www.instagram.com/cokuriya/



(この記事は2024年12月に取材したものです)

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