福島は第3のふるさと まちと人に惹かれて移住を決断

建築の仕事を通じて福島市に移住した大和田さんに、移住やまちづくりについてのお話を伺いました。

・東京都→福島市
・建築家としての仕事を継続

  • 起業
  • 家族で移住

INDEX

大和田 栄一郎さん

1986年茨城県で美術商・私立美術館を営む家に生まれる。大学で建築を学び、大学院在学中の2011年に妻の井上湖奈美さんと共同で建築デザイン事務所「Soi」を設立し建築家としての活動をスタート。並行してアトリエ設計事務所に勤務し数々の建築設計に関わる。東京と福島市を仕事で行き来した後、 2021年に福島市へ移住。二児の父。

大和田 栄一郎さん

Q. 移住前の仕事について教えてください

仕事は移住前も今も変わらず建築家として首都圏(東京・神奈川・埼玉)と東北(福島・仙台・山形)を行き来しながら仕事をしています。通常の設計もしますが、Soiで受ける仕事は少し特殊で、設計した建物に住みながらその建物の運営管理まで行うスタイルをとっています。
例えば、東京都中央区のビルの改修では、オーナーさんと一緒にコンセプトをつくり、ビルの1階から5階まで様々な職業の人たちに入居してもらい、私たち自身も住みながら、地域の子どもたちが職業や仕事を見てまわれる形につくり変えました。

Q. 福島市へ移住したきっかけを教えてください

暮らしと仕事を両立できる環境を求めて福島市へ移住

私も妻も自然豊かな場所で育ったので、2人目の子どもが生まれたタイミングで、仕事と自然の中での子育てを両立できる環境を探していました。それが叶えられるのが福島市でした。
仕事の面では、福島市で雑貨やインテリアを取扱う「暮しの良品 いげた」さんとのご縁があり、いげたさんが所有する建物や土地・空き家や空きスペースの利活用方法を一緒に考えるため、約5年間、毎月福島に通っていました。
子育ての面では「NPO法人青空保育たけの子」を見つけたこと。山形県米沢市を活動拠点にした認可外保育園で、自然の中で子どもたちを遊ばせることができ、事務局のある福島市からも通園バスで通えることを知りました。
福島市での仕事があったことと、理想の保育園に出会ったことで、福島市に移住を決めました。

株式会社いげた 代表取締役社長 井桁要さんと(写真:佐藤早苗)
株式会社いげた 代表取締役社長 井桁要さんと(写真:佐藤早苗)

Q. 福島市ではどのようなお仕事をされていますか?

まちの歴史を引き継ぐ建築を生み、まちに残していきたい

移住後は、いげたさんとより密接に関わっています。所有するマンションの一角をオフィスにリノベーションしたり、創業163年の歴史がある「いげたビル」3階の一角の活用方法をスタッフさんと模索したりと、企画・運営・実践を通して設計に組み込んでいます。


また、県庁通りの角地に立つ「文化堂ビル」の設計も担当しました。オーナーさんの「まちへつなげたい」という要望を受け、1階に広場スペースを設けたり、アーケードを彷彿とさせる、シンボル的な外観にしたりと、まちの歴史を建築に埋め込みながら、鳥害など今ある問題も解消できるよう設計しました。

まちの歴史を引き継ぎ、未来に残る建築をつくっていきたいと考えています。

Q. 福島市で新しい習慣はできましたか?

山登りや庭の手入れをする習慣ができました。
また、福島市に移住して条件を満たした場合に、福島市内4つの公衆浴場の入浴料が最長3年間無料になる「湯めぐりパスポート」を使って土湯温泉の貸し切り風呂に入って、帰りは「ささき牧場カフェ」でソフトクリームを食べるというサイクルもできました。
詩の暗唱が得意な娘は、新しい詩を覚えると古本屋「ブックス&カフェ コトウ」の店主に披露して、家族それぞれがみんな好きな本を買います。
福島でできた新しい家族の習慣で、とても気に入っています。

Q. まちの人とはどのようにしてつながっているのですか?

「紹介」はまちをつくっていく一番の要素だと思います。「誰々に紹介してもらいました」とすぐにその場所を訪れることで、元々のつながりがより強固になってくれたら嬉しいし、私もまちのネットワークに混ぜてもらうという感覚です。

Q. 移住して心境の変化はありますか?

豊かさや幸せを感じることは、量や大きさじゃないと実感しています。
近所の美味しいパン屋さんや福島市のシンボル的存在の信夫山(しのぶやま)に通うようになったり、庭の手入れをするようになったり。ほんのささいなことが私たちの暮らしを本当に豊かにしてくれています。まだ福島に来て3年目ですけど、勝手に地元のように感じています。

Q. まちづくりに関する展望を教えてください

暮らしながら自分で自分のまちを豊かにしていく

まちとはあくまでも自分の周りにできるもの。関わってくださる方々とのつながりの中に、「私にとっての福島のまち」があります。本当に小さなことでも、自分で自分のまちを豊かにしていこうと、常日頃から心がけています。
福島市は歴史のあるいいまちだと思うし、私も関わらせてもらっていいまちになってきていますし、今後もよりいいまちにしていきたいと思います。

まちづくりで言えば、市外から知り合いが来たら、私のお気に入りの場所を一緒に巡っています。かつて私が福島市の人に教えてもらった場所を、今度は私が人に伝えることこそ、私が取り組んでいるまちづくりと言えるかもしれないですね。

ふくしまぐらしのお気に入りベスト3は?

土地との結びつき

その人の魅力を発信するのに重要な要素は土地と結びつくことだと強く感じています。
例えば、福島で160年以上続く老舗の五代目社長・いげたさんのように、「福島の人たちが、福島でやっていること」をすごく魅力的に感じて私は移住してきました。
私自身も「福島に根付いて活動する建築家」として、少しずつ地域に結びついていけたらと思っています。

暮らしながらつながる 暮らしながらつくる

Soiのスタイルでは暮らしながらつながり、暮らしながらつくるのが自然な形。ゆっくり、その地に根を張るイメージです。暮らしながら、つながりを広げていくことを大事にしています。

まちは面白い!

私が建築家として福島で活動する根幹は、福島のまちはそもそも面白いし魅力的だというところからスタートしています。
福島の人は「福島は何もないよね」と言いますが、地域に根付く習慣や文化、魅力的な場所が実はたくさんあって、それに気づけているかどうかだと思うのです。
変わるべきは福島に住む人たちのマインド。ぜひ、再開発だけでなく、今あるまちにも目を向けてみてほしいです。

福島で暮らしてみたいなという方へ

その土地や歴史、住んでいる人たちにリスペクトを持って、自分がその場所で何ができるかを考えることが大事だと思います。私もまず福島を好きになり、「福島で何ができるか」と考えて移住してきました。
その土地を知るため、まずはその土地の人と話してみるところからはじめるといいと思います。

おすすめの近隣スポットは?

自宅から歩いてすぐの場所に信夫山があります。朝時間がある時は、家族みんなで展望台にのぼっておにぎりやパン(たけだパン)などの朝食を食べています。身近に自然がたくさんあるので、それがすごくいいなと思います。
 

信夫山(福島市観光ノート)

編集後記

いげたさんとのご縁をきっかけにご家族で福島市に移住してきた大和田さんは、福島を実家のある茨城、東京に続く第3のふるさとのように感じているそうで、すっかりふくしまぐらしを楽しんでいる様子でした。

今回は、福島市へ移住された大和田さんに、移住のきっかけと福島市のまちづくりについてお伺いしました。
今後も、県内各地の様々な移住者の方にお話を伺っていきますのでお楽しみに。 福島県への移住、Uターン移住を検討されている方々へ、少しでも参考になれば幸いです。


大和田さんの設計事務所 

Soi(Studio eiichiro owada + konami inoue)

(この記事は、2024年11月に取材したものです)

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