移住への決断と“人とつながる喜び”

  • 単身移住

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渡部 裕樹(わたなべ ゆうき)さんプロフィール

1986年兵庫県西宮市出身。
前職は愛知県弥富市で航空機の製造工場に勤めていた。2016年12月に福島県郡山市へ移住し、酒蔵である仁井田本家において前職で培ったノウハウをいかしている。

渡部 裕樹

熱意が通じて老舗酒蔵へ

郡山市東部の山間部にある創業300年を超える老舗の酒蔵、「仁井田本家」に勤務する渡部裕樹さん。大学院を卒業後、愛知県で航空機の製造工場に勤めていました。最先端のもの作りの現場から、伝統産業へ異色の転職。転身を決めた背景にあったのは「福島で働きたい」という強い思いでした。
「もともと旅行が好きであちこち出かけていたのですが、福島は訪れるたびに不思議と知り合いが増えていって。そういう場所は他にはありませんでした。それと同時に、工業地帯で働いていた反動か、四季の移り変わりを感じられる仕事をしたいと思うようになり、たとえば福島で働くとしたらどんなところがあるだろうと考え始めたのがきっかけです」
地元の西宮市が酒造りのメッカであったこと、日本酒の本を読み、歴史や造り方に興味を持ったことも酒蔵を意識するきっかけとなりました。知人の紹介で仁井田本家を知った渡部さんは、蔵を訪れ、蔵元と女将に直談判。熱意を買われ、採用と同時に郡山市に移住します。現在は食品課で甘酒や「こうじチョコ」など、酒蔵ならではの商品の開発に携わりながら、前職の経験をいかし、生産工程の標準化、マニュアル作りなども任されているそう。
「学ぶことが好きなので、今後は醸造についての知識も深めていきたいです。でも実はお酒にめっぽう弱いんですけどね(笑)」

仁井田本家自慢の商品を手に取る渡部さん
仁井田本家自慢の商品を手に取る渡部さん

福島でのくらし

休みの日は近くで開催されるイベントに出向いたり、趣味のサイクリングをしたりと福島での暮らしを満喫している渡部さん。そのフットワークの軽さに、移住を成功させる秘訣も隠されているようです。
「福島県内には個人やお店が企画するマルシェやイベントが多いので、面白そうと思ったものには積極的に参加しています。知り合いがいなくても、そういうところに行ったら自然と話も弾みますし、新しいつながりもできたりして。福島は広いので行きたいところが次々出てきますね」
移住する前にも、できるだけ現地の知り合いを作っておこうと足繁く福島に通ったと言います。その際に、縁もゆかりもない土地の情報収集の入り口としてSNSが役に立ったそう。
「やはり知り合いがいるのといないのとでは違うと思います。いざというときに頼れる人がいることは、移住する上で大きな要素ではないでしょうか」

磐梯山の山開きに参加した時の様子。 (写真提供:渡部裕樹さん)
磐梯山の山開きに参加した時の様子。 (写真提供:渡部裕樹さん)

人と人がつながるということ

人と関わるのが好きな渡部さんにとって、小さなコミュニティが有機的につながっている地方ならではの生活は居心地が良いものとなりました。その感覚を味わってもらうべく、もっと郡山市に人を呼び込みたいというのが渡部さんの目標です。
現在は、郡山市の観光をテーマにしたプロジェクトにも参加。企業の若い人たちが集まり、郡山の観光資源になるようなものを話し合う場では、渡部さんの“外の目線”はなくてはならないものとなっています。
最後に渡部さんにとっての“移住”について聞いてみました。 「移住してきた人は、やはりずっとよそ者なのかなと思います。でも、自分がその土地で結婚して子供ができたりしたら、その子はそこで生まれ育っていくわけで。次の世代の人たちが、この場所に生まれてよかったと思えるようになってくれたら、この決断も間違ってなかったと思えるのかもしれません」

創業300年を超える仁井田本家の18代目蔵元の仁井田穏彦さんとのツーショット
創業300年を超える仁井田本家の18代目蔵元の仁井田穏彦さんとのツーショット

1日の過ごし方

1日の時間をこんな風に

渡部さんの1日の時間の使い方が移住前後で大きな違いは見られませんでした。それについて渡部さんは「心にゆとりがあるのに、実際には時間が少しスライドした程度なのか」と改めてご自身でも驚いておられました。移住前後で1日の時間の使い方が変わらなくても、心のゆとりを持てるかどうかが移住後の生活のキーポイントとなりそうです。

編集後記

新しい場所にも果敢に飛び込んでいくバイタリティあふれる性格の渡部さん。移住前には愛知県から月イチで福島を訪れていたそうで、“福島愛”が高じての移住となりました。積極的に毎日を楽しむ姿勢に移住を成功させるヒントが隠されているように感じます。

(掲載:2018年12月)

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