『福島に住む』から『福島でどう生きるか』へ。
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古崎 泰介(ふるさき たいすけ)さんプロフィール
埼玉県出身。大学卒業後、企業の営業職で働き、2014年6月、26歳の時に小野町の地域おこし協力隊として移住。
任期満了後の2017年、小野町で一般社団法人を立ち上げ、高齢で継続が困難だった地元新聞販売店の仕事を引き継ぐなど、地域の課題解決に向けた事業を行っている。
一般社団法人ウムラウフ代表。

ドライブで訪れた街に惹かれて
「福島はどこを走っても最高のドライブになるんです」。愛車のロードスターで道の駅をめぐることが大好きという古崎さん。初めて小野町を訪れたのも、趣味のドライブでした。
「両親が福島県出身のため、福島県には何度も足を運んでいました」。古崎さんは小学生から埼玉県内で暮らし、首都圏で就職をしましたが、「会社勤めではなく、自分がやりたいことをしたい、地域の人とのつながりの中で仕事をしたい」と思うようになります。そんな気持ちを抱きながらドライブで各地を訪ね、古崎さんが決意したのは、地域を盛り上げる一人になるということ。
2014年6月、小野町に『地域おこし協力隊』(※)として移住、町の商工会を拠点に活動を始めました。

小野町で最初の地域おこし協力隊となった古崎さんは、まず存在を知ってもらおうと、町の広報に活動報告を書き続けました。町の行事にも積極的に参加し、どこにいても地域の人たちから声をかけられる存在になります。「会社員の時には、仕事以外の付き合いはなくて、休日は海外出張でつぶれることも多かったんです。小野町に来てからは、広く人とつきあうことが増えました」。地域活性化を目指し開発に関わった小野町産のそば粉を使った新商品『おのまち小町ガレット』を「町で協力してくれた人たちの力があったから」と説明する古崎さんの言葉には、地元の人たちを大切にする姿勢が表れています。

若い世代が求められていることを感じたから
「地域おこし協力隊でここに住み始めたものの、そのあとに何をするべきかなかなか決まらなかった。3年間で目標を築けなかったら、ここには残っていなかったと思います」。また、協力隊では前もって住居が用意されていた分、任期終了後の住宅探しで苦労したと古崎さんは言います。「この地域にも空き家がたくさんありますけど、住めるようになるまでには、ボイラーや水回りなど設備の修繕費用がかかることが多い。管理費を考えればアパートの家賃は決して高いものではないんですよね」。
古崎さんは、高齢化が進む地域の課題を若い世代が関わることによって解決したいと意志を固め、一般社団法人ウムラウフ(ドイツ語で『循環』の意味)を設立します。高齢で引退を考えていた地区唯一の新聞店(小野町夏井地区)の仕事も引き継ぎました。
「地域には、自分が手を差し伸べることで役に立てることがたくさんある。それは自分を必要としてくれる人がたくさんいるということなんです。凄いことじゃないですか」。古崎さんの事務所には、地元の人が入れ代わり立ち代わり訪れます。「町では、休日でも、買い物していても声をかけられます。プライバシーがないと感じる人もいるけど、隠し事がないようにすればいい。個人が磨かれるし、団体や組織に頼らなくても自分でやっていけるという自信につながりました」。


編集後記
古崎さんが住む小野町は、中通りの東側、阿武隈山地に囲まれています。町内の中心を流れる夏井川は、桜の名所として多くの観光客が訪れます。小野小町の伝説の町として知られ、平安時代の坂之上田村麻呂の東征に由来を持つ文化財も注目されています。近年は、町のグルメを再発見し、町全体で発信し続けています。
(掲載:2018年4月)