自分らしい働き方を探して見つけたトマト農家の暮らし

2020年、新しい働き方やライフスタイルを模索するなかで農業を志して南会津町へ移住。2021年4月からご夫婦で南郷トマト農家として新規就農された落合宏朗さんにお話を伺いました。

・東京都→南会津町
・アパレル会社→トマト農家、花泉酒造の蔵人

  • 夫婦で移住
  • 就農

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落合宏朗さん

1983年福島県生まれ。高校卒業までを福島県二本松市で過ごし東京の服飾系専門学校へ進学。専門学校卒業後は東京にあるアパレル会社勤務。30代半ばを迎えて働き方を考える中、都内で開催された移住・就農セミナーをきっかけに南会津町へ夫婦二人で移住・就農、トマト農家を営む。

落合宏朗さん

はじめに自己紹介をお願いします。

落合宏朗です。春先から収穫期の終わる11月までは南郷トマトを栽培し、冬は同じ南会津町にある造り酒屋の花泉酒造で蔵人をやっています。東京で会社勤めをする中で、自分で全て決められる仕事がしたいと思い、いつか生まれ育った福島県に帰りたいとの思いもあり、福島県で就農を考えていました。そんなとき、都内で開催された南郷トマトの就農セミナーに参加したのをきっかけに、2020年に移住・翌年に新規就農しました。今は南会津町で暮らしながらハウス15棟で南会津町のブランドトマト「南郷トマト」を栽培しています。
 

移住セミナーの参加をきっかけに夫婦で南会津町へ移住

東京でキャリアを積んできましたが、30代も半ばに差しかかり、このままの暮らしでいいのかなと悩んでいたんです。自分の性格的に組織の中で働くより、自分の力で事業をやっていくほうが性に合うだろうなという結論に至ったこと、また、同じタイミングで、妻もずっと働いていたアパレルの仕事から転職したいと考えるようになっていたこと、そして、もともと、いつかは福島県に戻りたいと考えていたこともあり、ちょうどよいタイミングだと移住や就農も視野に入れて情報収集をはじめました。農業に携わるならブランド野菜を作りたいと考え、福島県内のいくつかの候補地から南会津町に決めました。

Q. 移住してからの暮らしはどうでしたか

南会津町に移住を決めたきっかけの1つでもある研修制度の中に親方制度がありました。その親方に農業のやり方、南会津町での生活の相談を行うことができます。 研修先の親方は、父親の代からのトマト農家で私と同い年。そのような頼りになる方がいるのは良かったですね。

親方は法人経営で農業をしているので、まずはそこで研修生として働きました。研修期間中に私が使える畑とハウスが見つかり、移住して2年目に独立して今年で就農3年目になります。親方は「わかんないことあったらおいで」と言ってくれていて、研修を終えてからも肩ひじ張らない間柄ですね。
そして、住まいは自治体などに移住相談をしていた際、ちょうど町営住宅に空きがあり入居できました。いま南郷地区で状態のいい空き家がないか、住宅を探しているところです。物件の数がもっと増えると助かるのですが。

普段の生活では、買い物は車で30分程度のお隣の田島のスーパーに週に1回行ってまとめ買いして、ちょっとした物は南郷の商店で。ネットショッピングは冬でも中1日あれば届くから不便は感じないです。白河や会津若松、那須も車で1時間半ぐらいなので、イメージしていたよりも便利に暮らせる場所だなと感じています。

Q. 南会津町で迎える冬の暮らしが気になります

雪は2mくらい積もるので、静岡県生まれの妻だけでなく、福島県二本松市生まれの自分も驚きました。ひどい時は雪の重さでハウスが壊れてしまう年もあると聞くのですが、この2年は大丈夫だったのでほっとしています。
また、普段の生活で、自分で雪かきするのは玄関先と駐車場だけですが、それでも1日に4回ぐらいやらないといけない時もあるので大変です。そういう意味では、普段の生活で通る県道や国道は、除雪車がしっかりやってくれるので安心ですね。

Q,ご夫婦で南郷トマト農家の道を選んだ決め手は?

町ぐるみのサポートと南会津町の先輩移住者とのつながりに助けられて

祖父が副業で畑をやっていて、小さい頃に手伝ったこともあり、農業自体のイメージは何となくありました。「独立」と「福島に帰る」を考えた時、就農は選択肢に入ると思い、福島県内で農業ができる移住先をいろいろ検討して、ここ南会津町に決めました。
 

南郷トマトに惹かれたのは、ブランドトマトとしてしっかり確立していたこと、そして、支援や就農するまでの流れが分かりやすく、農業未経験の自分でも就農・独立へのイメージができたからです。就農までの支援体制がとても手厚くて、南会津町役場やJA、移住コーディネーターさん等、まさに町ぐるみでサポートいただけると感じました。何より、都内で開催された南郷トマトのセミナーで「トマトでやっていくには2人以上必要だ!」と説明された時、そのセミナーにたまたま一緒に参加してくれた妻が「一緒にやってもいいよ!」と言ってくれたことで就農を決意できました。

Q. 新規就農をしてからの生活は順調でしたか

移住後、南会津町でスタートした研修の1年目にハウスの空きが見つかり、早めに独立できたのはよかったです。移住後に出会ったいろいろな方が情報をくれたり、本当に助けてくれました。最初の年はトマトの皮が裂けてしまう裂果(れっか)が多くて、収穫量は組合平均に届きませんでした。2年目からは、果形の良い新品種を栽培した事も功を奏し目標を超える量のトマトを出荷できました。トマト生産者として食べていける自信が少しついてきたかなと思っています。より良いトマトを出荷できるよう、普段から研究会などでほかの生産者さんと情報交換しながら、自分なりに目標を立てて日々挑戦中です。

1日の過ごし方

1日の時間をこんな風に

2年目より3年目と、トマト農家として着実にステップアップしている落合さん。普段の夏の1日をグラフにしました。

4月~ハウスの片づけ(冬支度)の終わる11月中旬まで、丸1日お休みの日はないそうですが、週に1日程度は作業を午前中で終わらせ午後は買い物などに行けるようにしているそうです。また何か用事がある場合は、予定に合わせて作業を進めて柔軟に時間を作っているそうです。「そうして時間を調整できるのも個人農家の良いところ」と落合さんは話します。

また、落合さん自身は10月下旬から酒造りの仕事が始まるため、ハウスの片付けが終わるまでの間はダブルワーク、終わってからは蔵人の仕事に集中されるので、落合さんいわく「一息つく暇もない」そうですが、奥様はハウスの片付けが終わってから1か月程度、ご実家に帰省し、リフレッシュの時間を取られるそうです。

ふくしまぐらしのお気に入りベスト3は?

南郷トマト

南郷トマトは昔懐かしい甘みも酸味もあるトマト。常温で食べると味がよくわかるのでおすすめです。首都圏の市場に多く出荷されていて、お店に届いた時に熟すよう赤くなる前にどんどん収穫していきます。南会津町の直売所や会津若松市のスーパーでも販売されているので、ぜひ食べてみてください。

花泉の酒

冬季は花泉酒造で蔵人をやっています。花泉酒造のお酒は酒米だけでなく、もち米を使って仕込んでいるので、甘い味になるのが特徴です。妻が作ってくれるおつまみで晩酌するのが最高です。日本酒を作る仕事は重労働ですけど面白いです。

お城山の桜

生まれ故郷の二本松市・お城山にある桜は格別です。春、桜の頃に実家に帰省するときは必ず訪れる場所です。二本松市にも酒蔵はあるけど、花泉酒造の日本酒を飲みながらの花見もおすすめです。

福島で暮らしてみたいなという方へ

豪雪地の農村は、高齢者が多いイメージがあるかもしれませんが、最近の南会津町は30~40代の移住者が多く、先輩移住者さんの方から声をかけてくれたりすることもあります。僕も、そうして声をかけてもらって、バドミントンサークルに入ったりして、地域の皆さんとのつながりをつくっていくことができました。また、酒蔵の仕事は、サークル仲間から声をかけてもらい、働くことになったんですよ。南会津町はそんな感じで若い人が増えてきたので、毎日楽しく過ごせていますので、よかったらぜひ。

おすすめの近隣スポットは?

最後に、落合さんにおすすめスポットを聞いてみると、自宅から徒歩で行けるグルメスポットとより冬を楽しめる南会津町らしい場所を教えてくれました。

「近所にある居酒屋さんのカレーが美味しいので時々食べに行きます。移住前は、まさか歩いていける場所で外食できる暮らしになるとは思ってなかったですね。冬に酒造りの仕事が休みの日には仲間と南郷スキー場へ出かけます。実はスノボもスキーも、南会津町の仲間からおさがりをもらって、ここに来てから初めてだったんですよ。毎日仕事しているハウスからもスキー場が見えますよ」


編集後記

今回は南会津地域・南会津町へJターンされた、落合宏朗さんの移住とその後の暮らしについて、お話を伺いました。今後、県内の様々な地域の様々な移住者の方にお話しを伺っていきますので、お楽しみに。

福島県への移住を検討されている方へ、少しでも参考になれば幸いです。

更新日:2023年09月12日

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