心や体を大事にしながら、地元でデザイナーに
心や体を大事にしながら、地元でデザイナーに
profile
福島県西郷村出身。東京で作業療法士として勤務したのち、2017年に地元へUターン。独学でデザインを学び、「Aruca ビジョンデザイン企画」を立ち上げる。企業のデザインやブランディング、障がい者の雇用支援にも取り組んでいる。
本来の自分を取り戻すために
フリーランスのデザイナーとして働く星かおりさん。独学で勉強して「Aruca ビジョンデザイン企画」を立ち上げ、企業のデザインやブランディング、障がい者の雇用支援にも取り組んでいます。星さんが移住してきたのは2017年のこと。東京での仕事を辞め、生まれ育った西郷村にUターンしてきました。
もともと地元の閉塞的な空気が嫌で、とにかく村を出たかったと言う星さん。千葉の医療系の大学を卒業後、東京で作業療法士として働いたり、趣味でダンスや歌に取り組んだりとアクティブに活動していましたが、もともと体が弱かったことから体調を崩してしまいます。そこで仕方なく実家に帰ることに。
「一度リセットしようと思って。でも東京の友達が多いので落ち着いたら戻るつもりでした。実際に休養中も月1~2回は東京に行っていましたね。でも、地元で長い時間を過ごすうちにやっぱりこっちの方がいいかもなあって」。
そう思ったのは、たまに行く東京の空気や時間の流れの早さ、圧倒的な刺激量に自分の体が合わないと気づいたからだと言います。
「エンタメや人との出会いなど刺激はたくさんあるけれど、逆にその刺激が体の弱いわたしにとっては強すぎたんですよね。田舎でゆっくり過ごしつつ、たまに東京に遊びに行く暮らしの方が合っているんだろうなと思いました」。
標高が高い白河市は夏も涼しく、本来の健康的な自分でいられる。さらに、新幹線に乗れば東京にも1時間ほどで遊びに行ける。それが決め手となり、本格的に地元にUターンすることを決意しました。
経験ゼロからデザイナーへ
移住直後は、自宅でできるライティングの仕事を始めた星さん。ですが、やはり人と関わる仕事がしたいと思い、デザインの勉強を始めました。とはいえデザインもビジネスも全くの未経験。独学で勉強しつつ、SNSで出会ったフリーデザイナーの方に添削してもらったり、ビジネスコンサルを受けたりしながら、少しずつスキルを身に着けていったと言います。
「仕事にするまでには2年ほどかかりました。はじめは、名刺やチラシのデザインでこつこつ実績を作りました。それから少しずつ地元の方たちの中でもクチコミが広がり、地元の広報誌でデザイナーとして紹介してもらえたことで県内のさまざまな法人から声を掛けていただけるようになったんです」。
今では「あなたにお願いしたい」と言われることも増え、企業のWebサイト制作やブランディングにも関わっています。こうして規模の大きい仕事を受けることで、現在は障がいを持つ方にアシスタントをお願いできるように。「作業療法士時代からやりたかった障がい者雇用支援にも取り組めていてうれしい」と星さんは語ります。
デザイナーとして順調にキャリアを積む星さんにとって、東京ではなく福島で仕事をする良さとは?
「東京でフリーデザイナーになるには、まずデザイン会社に勤めることが多いと思いますが、そのルートだと体調面も含めてわたしはデザイナーにはなれなかったと思います。福島にはわたしができることを求めてくれる人たちがいて、仕事に疲れたら自然に触れたりのんびり過ごしたりすることもできる。自分の体を大事にしながら、地元にも貢献できるのがうれしいですね」。
同じ移住者の存在が支え
今では地元の人たちと関わりながら、充実したUターン生活を送る星さんですが、意外にも人間関係には少しつまづいたのだそう。東京での生活が長かったぶん、地元に残っていた友人とはなかなか話が合わず、孤独感を抱いていたと言います。その中で助けになったのが『移住女子』のコミュニティでした。県南地域の移住コーディネーターの増成貴弘(ますなりたかひろ)さんに誘われ、福島に移住してきた女性のためのイベントに参加。そこで出会ったメンバーとのLINEグループがあるのだそう。
「友だちを作るのが一番の目的ですね。大がかりな活動をしているわけではなく、たとえばご飯を食べたいときにさくっと誘えるような、ゆるいコミュニティです。たまに、料理教室やBBQなどのイベントを開催することもあります」
移住前に、すでに移住している同世代との接点を持っておくと安心だと語る星さん。古くからある地域コミュニティに入っていくのは、なかなかハードルが高いもの。そんなときに、星さんや同じ移住者の存在が助けになるかもしれません。最後に、星さんに今後について聞いてみました。
「今は、福島の地元のPRや商品のブランディングに携われるのが楽しい。だから、自分のスキルを通して地域に関わりつつ、同じ思いを抱える移住者との交流を深めていきたいですね。東京の友人とオンラインで会話したり、たまに会いに行ったりするのも心の支えになっているので、仕事と上手くバランスを取りながら、ゆとりある時間を大事に過ごしていけたらと思います」。
取材を終えて
もともと東京での刺激的な生活を楽しんでいた星さんにとって、福島へのUターンは決してポジティブな感情だけではなかったはず。でも今こうして、いきいきと働く星さんの姿を見ると、福島で過ごすことで少しずつ本来の自分を取り戻していったのだと感じました。
自分が心地よく過ごせる環境は、年齢や体調、ライフステージによっても変わってくるもの。東京との接点をほどよく持ちつつ、環境を変えて自分らしく働きたいと考えている方は、一度星さんとお話してみると良いかもしれません。
(掲載:2021年11月)
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